盲導犬の一生
1.子犬の誕生(誕生~生後約50日まで)
盲導犬の育成は子犬の誕生から始まります。 北海道盲導犬協会では毎年2月から10月にかけて母犬の出産があり、年間約70頭の盲導犬の候補生が誕生します。元気に生まれてきた子犬たちは誕生から約50日間、母犬や兄弟犬たちと一緒に繁殖犬飼育委託ボランティアの家庭で過ごします。
2.パピーウォーキング(生後約50日~1歳)
子犬たちはパピーウォーカーの家庭で元気盛んな時期を過ごします。パピーウォーカーとは生後50日から約1年間、子犬を家庭で飼育してもらうボランティア家庭のことです。名前もここでつけてもらいます。この1年間で子犬たちがもらうのはたくさんの愛情とさまざまな経験。体も心もほぼ一人前の盲導犬候補生に成長していきます。
3.盲導犬適性評価(1歳ごろ)
パピーウォーカーからたくさんの愛情を受け協会にもどってきた犬たちは約7ヶ月間の訓練に入りますが、訓練前に行われるのが適性評価です。これは訓練士が約1ヶ月間一頭一頭と何度も外を歩き、生まれ持った個性や性格が盲導犬に向いているかを把握する大切な評価です。盲導犬になる為の第一歩です。
4.盲導犬の訓練(1歳~2歳)
■ 基本訓練
「すわれ」「まて」「ふせ」などの基礎的な訓練から始まり、徐々に道路や交通機関などを利用する誘導訓練に入っていきます。この訓練は約7ヶ月行われます。訓練の基本は「よくほめる」こと。ほめて犬たちの学習意欲を高めていくこと、つまり「お仕事のやる気」を引き出すことが重要なのです。大切な行動を何度も繰り返して、一人前の盲導犬に少しずつ近づいていきます。
■ 誘導訓練
誘導訓練はハーネスをつけて外を歩く訓練で、これが盲導犬のお仕事になります。静かで歩道の広い場所から始め、繁華街や歩道のない道、バスや電車の乗り降りなどの経験を増やしていきます。
■ 雪道での訓練
12月から3月頃まで雪が積もる北海道では雪道での歩行訓練が欠かせません。雪壁で道路が狭くなり道も滑りやすいので、雪がない時よりもユーザーを気遣い、道路の変化に合わせて誘導する応用力が必要です。
■ アイマスク歩行訓練(2歳頃)
訓練が終盤になる頃、アイマスク歩行訓練を行います。この訓練は担当訓練士がアイマスクをつけて歩き、約7ヶ月間の訓練内容がしっかり身についているかを確認する訓練です。訓練士と盲導犬候補生のこれまでの努力が試される瞬間です。
5.共同訓練(2歳頃)
アイマスクをした訓練士を安全に誘導できるようになったら、盲導犬の「仮免許」がとれたようなもの。そして、将来のパートナーとなる視覚障がい者と出会うことになるのです。二人(一人と一頭)は寝食をともにしての訓練を4週間行います。これが「共同訓練」です。さまざまな喜びや苦難の壁を一緒に経験しながら、お互いを信頼できるパートナーとして認め合う大切な訓練。共同訓練を修了してはじめて、「盲導犬」と「ユーザー」になることができるのです。
6.盲導犬としての活躍( 2歳~12歳)
晴れて共同訓練を終了し、「盲導犬」と「ユーザー」になった二人は、毎日を共に過ごし、歩くことで絆を深めていきます。時には失敗するともありますが、それは次の成功への一歩。盲導犬とユーザーの歩みはまさに共同作業と言えるのです。通勤や旅行、お散歩など二人はいつでも一緒。一緒だからこそお互いに安心して過ごせるのです。行く先々で皆さんが二人を温かく受け入れて下さることを私たちは願っています。
7.盲導犬の引退( 12歳~)
長い間ユーザーを支える盲導犬も12歳になると、いよいよ引退を迎えます。引退後はお疲れ様とこれまでの感謝の気持ちを込めて、協会施設内にある老犬ホームにあたたかく迎えます。ここでは若き日に訓練した仲間たちとのんびりと生活ができるように、職員とボランティアさんが24時間体制でお世話をしています。