盲導犬Q&A

協会には全国各地の皆様より盲導犬に関する様々な質問が寄せられています。 ここでは寄せられる多くの質問の中より特に問合せの多い項目を掲載いたします。

1.盲導犬の歴史

人間と犬との長い歴史の中で、視覚に障がいのある人と犬との関わりは紀元前からであり、犬を話し相手や案内者として使用していたと考えられています。ギリシャ時代の古都ポンペイの壁画や中国の絵巻物にも視覚に障害のある人と犬との記述が残されています。しかし、組織的な訓練がはじめられたのは19世紀になってからのことです。第1次世界大戦後(1914~1918)には、戦争によって失明者が多く出たため、改めて盲導犬の必要性が高まりました。

1819年
ドイツのクライン神父(視覚障害者訓練施設の創設者)が盲導犬の訓練に関する本を出版する。
1923年
ドイツのポツダムに国立の盲導犬訓練所ができる。
1927年
シーイング・アイの創設者ユースティス夫人がポツダム盲導犬訓練所を視察し、盲導犬に感銘を受け、記事をサンデーイブニングポスト紙に紹介。大変な反響を呼ぶ。
1929年
アメリカで最初の盲導犬学校シーイング・アイが設立される。
日本に盲導犬が最初に登場したのは、1938年にアメリカの青年が盲導犬を連れて旅の途中、立ち寄り紹介したことがはじまりです。

1939年
日本の愛犬家がポツダム盲導犬訓練所から4頭の盲導犬を輸入し、失明軍人に寄贈する。
1957年
日本で訓練された盲導犬第1号「チャンピー」が誕生。
1967年
日本盲導犬協会設立。
1970年
札幌盲導犬協会(現北海道盲導犬協会)設立。
1970年
中部盲導犬協会設立。
1971年
東京盲導犬協会(現アイメイト協会)設立。
1972年
日本ライトハウス行動訓練所設立。
1972年
栃木盲導犬センター(現東日本盲導犬協会)設立。
1980年
関西盲導犬協会設立。
1983年
福岡盲導犬協会(現九州盲導犬協会)設立。
1990年
兵庫盲導犬協会設立。
日本国内には国家公安委員会の指定を受けた9つの盲導犬育成施設があります。

●公益財団法人北海道盲導犬協会
●財団法人東日本盲導犬協会
●財団法人アイメイト協会
●財団法人日本盲導犬協会
●財団法人中部盲導犬協会
●財団法人関西盲導犬協会
●社会福祉法人日本ライトハウス
●社会福祉法人兵庫盲導犬協会
●財団法人九州盲導犬協会

2.訓練

訓練初期は、まず充分なコミュニケーションをとりながら、声かけに対する反応を高めていきます。声かけに対する具体的な反応とは、名前を呼んだら振り返る、「よしよし」という誉め言葉で喜ぶ、「ノー」という言葉でその動作をやめるなどです。その後、すわれ、伏せなどの基本訓練を行いつつ、ハーネスを着けて外を歩く誘導訓練へ進んでいきます。誘導訓練は、はじめは区画のはっきりした分かりやすい道路から歩き、その後は繁華街、雪道、地下街、乗り物などの乗車訓練を行っていきます。盲導犬として卒業するまでには、アイマスク歩行による訓練評価も行います。
毎年、秋から春にかけて約7ヶ月間の訓練を行います。一通りのことを教えるのにそれほど長い期間は必要ありませんが、教えたことが確実にできるようになることと普段と状況が変わってしまっているような場合にも、犬が自分で判断してうまく仕事ができるようになるまでにある程度長い期間を設けています。
訓練用語は各施設によって違いますが、北海道盲導犬協会では下記のような言葉を使っています。

ヨシヨシ
誉める時にかける言葉。
ノー
叱る時にかける言葉。
スワレ
お尻を床につけて座る。
フセ
胸を床につけて伏せる。
マテ
動かないで待て。
ヒール
人の横につけ。
オッケー
安全であれば進め。
ストップ
止まれ
マッスグ
進行方向に向かって真っ直ぐ進みなさい。または、集中しなさい。
ヨッテ
右、もしくは左へ寄れ。
オーダン
横断歩道を探しなさい。
コーナー
わき道を探しなさい。
カイダン
階段を探しなさい。
ドア
ドアを探しなさい。
バス
バスやバス停を探しなさい。
ワン・ツー
排便しなさい。
盲導犬になるための訓練で難しい点は、訓練士が犬を扱うことは易しくても、実際に盲導犬を扱うのが視覚障がい者であって、訓練士と同じように扱うことが非常に難しいということ、そして盲導犬が歩く場所は簡単な道路ばかりではなく、目的地も人によって違いがある上に、同じ道路でも路上駐車、回収ゴミ、道路工事、積雪などで日々状況が変化することなどが上げられます。そのため訓練では、誰の指示にもスムーズに従うように訓練最終時期には指示の言葉をより弱い調子で使うこと、訓練の場所については、繁華街、お店、地下街、バス、地下鉄、雪道など、いろいろな状況を経験させることでどんな場所でも落ち着いて歩けるように訓練を進めていきます。
北海道では12月の終わりから4月の中頃まで雪が積もっていますので、冬道での訓練が必要になります。夏道(雪の積もっていない道路)と比べて、冬道は雪壁によって道路幅が狭くなり、場所によっては歩道が通れなくなります。道路状況は毎日変化し足もとも滑りますので、冬道ではより主人を気づかうことと、道路状況の変化に対する応用力が重要になります。
訓練は必ず指示に従わせることや仕事に集中させることも大切ですが、それが原因で精神的な負担をかけたり、訓練を受けることに対して消極的になったりしないようによく誉めながら進めていきます。訓練中の犬の様子は、張り切ったり、喜んだり、緊張したり、時にはおもしろくなくなったりしますが、段階を進めるにあたり歩くスピードや犬の気持ちは、ある一定の状態が持続するように訓練していきます。
盲導犬を希望する視覚に障害のある人は、候補犬と一緒に4週間(代替は2週間)の共同訓練を受けます。訓練の内容は、盲導犬との歩き方はもちろんですが、その他に犬の食事の与え方、トイレのさせ方、手入れの仕方、健康管理の方法など生活全般も含まれます。共同訓練が修了し盲導犬として卒業しても、はじめから使用者の言うことをしっかり聞けるわけではなく、使用者とのコミュニケーションを通して信頼関係ができあがってからしっかりと言うことを聞くようになります。盲導犬との信頼関係ができあがり自分の思い通りに歩けるまでには、初めて盲導犬を持つ方で1年~2年程度、2頭目以降の方で半年程度はかかると考えています。

3.盲導犬の一生

1.生後約50日までは繁殖犬飼育ボランティアの家庭で母犬と過ごします。
2.生後約50日になると、パピーウォーカーというボランティアの家庭に約1年間預けられます。
3.約1才になってパピーウォーカーのところから盲導犬協会に帰ってきた犬たちは、約3週間かけて指導員による適性評価を受けます。
4.適性評価に合致した犬たちは、約7カ月間、盲導犬になるための訓練を行います。
5.盲導犬希望者が盲導犬を取得するためには、1頭目の方で最低4週間、2頭目以降の方で最低2週間の訓練が必要です。
 上記のような経過で、盲導犬候補犬達は2歳で盲導犬としての訓練を修了し12歳までのユーザーと生活をします。
視覚に障がいのある方が盲導犬を使う目的はさまざまです。例えば仕事を持っていて通勤のために使っている人、自宅で仕事をしていて空いている時間で運動(健康)のために使っている人、主婦や仕事を定年された方が散歩や買い物のために使っている人などです。それぞれに盲導犬との過ごし方は違いますが、基本的には盲導犬ユーザーが外出するときに盲導犬も外を歩くことになりますので、それ以外の時間にはユーザーがトイレに出したり、エサを与えたり、手入れ(ブラッシング)をしたり家の中でリラックスしています。
共同訓練が修了してユーザーとの生活が始まった後は、はじめの1カ月は週に1回、その後は月に1回の年間15回「生活状況報告用紙」という報告書をいただき、その都度連絡を取り合って、盲導犬との生活で困っていることが無いかなどを確認します。
 「歩行生活状況報告用紙」の主な内容は次の通りです。
1.盲導犬の健康状態(便の状態、体重、食事の内容など)
2.日常生活状況(周りの人の感想、困っていることなど)
3.歩行状況(歩行回数や歩行時間、歩行スピード、ぶつかった経験、他の動物に対しての反応、ドアや階段への誘導など)
4.報告すべき主な出来事
5.盲導犬使用者としての意識
6.感想、質問について
北海道盲導犬協会では盲導犬の引退年齢を12才としています。犬によっては10才を過ぎると老化が顕著に現れます。そのため盲導犬が12才近くになると、盲導犬として活躍が可能かどうかを指導員が判断します。判断する内容は、ユーザーの指示に対する反応時間、障害物に対する回避動作、バスや電車などの乗車ステップでの動作などです。
引退後は、老犬飼育委託家庭(パピーウォーカーや一般のボランティア)で飼育いただくか、または協会施設内になる老犬ホームで静かな老後生活を送れるようにケアしております。

4.計画的な繁殖と繁殖ウォーカー制度

北海道盲導犬協会では、繁殖犬を管理しており計画的に交配させることで、盲導犬の候補犬たちを確保します。1年間に生まれる子犬は、70頭ほどです。
繁殖犬には盲導犬として必要な特性をもつ犬が選ばれます。その特性とは、人間に対する愛着、作業に対する集中力、健全な身体などです。
盲導犬協会で所有している繁殖犬を家庭で飼育していただくボランティアを繁殖犬飼育ボランティアと言います。繁殖犬飼育ボランティアの家庭では毎日の運動や健康管理、そして愛情豊かな飼育をしていただきます。また、お母さん犬を飼育していただく家庭では、子犬の出産も行われます。

5.パピーウォーカー制度

パピーウォーカーとは、生後50日ぐらいの子犬を約1才になるまで育てていただくボランティアの家庭を言います。犬の1才齢は人間の年齢に換算すると16~18才ぐらいまで成長しますが、その犬が将来立派な盲導犬になれるよう基本的なしつけや愛情豊かな飼育をしていただきます。犬は家庭の中で家族の一員として生活し、人間と暮らす素養を身につけます。

6.適性評価

パピーウォーカーのもとから施設に帰ってきた犬たちは、盲導犬として適性があるかどうかの評価を受けます。約3週間かけて犬の性格や性能、体格などを、実際の歩行や共同生活をとおして総合的に判断します。特に人に対する好感度、声に対する感受性、集中力、作業意欲、攻撃性、服従性、歩く態度などをチェックします。これらの基準をクリアし適性があると判断された犬は盲導犬としての訓練を開始します。
犬はそれぞれ性格も動作も違います。そのなかでも人に対して友好的な犬や、落ち着きのある犬が盲導犬に向いていると考えられます。
キャリアチェンジ(盲導犬になれなかった)となった犬たちは、パピーウォーカーに引き取られるか、一般の希望者に引き取られます。

7.盲導犬の健康管理

食事はドライのドッグフードを1日2回与えるようにしています。
理由は、視覚に障がいのある盲導犬使用者でも扱いやすいこと、そしていつも同じものを食べることで便の状態が安定し、健康維持がしやすいことなどです。
盲導犬を使っている使用者自身で動物病院へ行くか、または家族の方や知り合いの方に連れて行ってもらうという場合が多いですが、その怪我や病気の状態によっては盲導犬協会で預かることもあります。
盲導犬の健康状態は原則として使用者が管理します。ただし、北海道盲導犬協会では年に1度行われる盲導犬ユーザー研修会での犬体検査や、4月には狂犬病予防接種、5月にはワクチン接種、そしてフィラリア予防薬の発送などによって、定期的に様子を伺ったり盲導犬の健康に注意するように指導しています。
盲導犬ユーザーが管理します。排泄はリードをつけた状態で外に出してさせます。そのままさせて後から便を袋でとる場合と、はじめに袋をベルトで腰につけて直接オシッコや便が袋に収まる方法と2通りあります。ベルトを使用する方法は、適当な排泄場所の少ない市街地などに外出している際には非常に便利な方法です。
基本的には盲導犬使用者が行います。希望者が盲導犬を取得するための共同訓練では、手入れはできるだけ毎日すること、シャンプーは3週間から1カ月に1回すること、その他には食事を与えること、排泄させることなど、日常の管理はユーザー自身でできるように訓練や指導をしていきます。

8.取得の方法

盲導犬を希望する方は盲導犬協会に直接問い合わせるか、各市町村の福祉の窓口に問い合わせます。盲導犬協会に申し込みがあれば、希望者の自宅に盲導犬指導員が訪問し面談を行い、その人が盲導犬を持つ上で問題がないか確認します。
盲導犬を取得するための共同訓練は、1頭目の方で4週間、2頭目以降の方で2週間、協会に宿泊して行います。なお、事情によっては希望者の自宅(在宅訓練)で行う場合もあります。
盲導犬を取得する方が訓練のため負担する費用は、食費、クリーニング代、卒業後のドッグフード代など3万円ほどになります。盲導犬事業は補助事業となっていますので、盲導犬の育成や貸与にかかる費用は、視覚障がい者へ盲導犬を貸与した時点でその方のお住まいの自治体から一部補助を受けることができるようになっています。

9.盲導犬の数

日本全国に視覚に障がいのある方は約30万人おり、盲導犬を希望している方は約3,000から4000名いると言われています。
厚生労働省の発表によると、2020年10月1日現在の日本国内の盲導犬実働数は909頭です。
当協会へ1年間で盲導犬の貸与を申込される方は15~20名、それに対して盲導犬育成頭数は15頭前後になります。
盲導犬希望者と盲導犬の組み合わせは、盲導犬指導員が行う面談内容をもとに、それぞれの性格や歩行スピード、体格など、希望者にどのようなタイプの盲導犬が合うのかを検討し決定していきます。対象者に合う候補犬がいない場合は、貸与が翌年度に延期される場合もあります。また、候補犬よりも対象者の数が大きく上回ってしまった場合は、持ち替え(2頭目以降)の方を優先することを基本的な考えとして組み合わせを決定していきます。

10.犬種

北海道盲導犬協会で盲導犬に使っている犬種は2種類で、ラブラドール もしくは ラブラドールとゴールデンの1代雑種(F1)を盲導犬として使用してます。
人に対して友好的で見た目にもかわいらしいところと仕事が好きなところです。ただ、とても活発な面もありますので、盲導犬使用者は犬の扱い方をしっかりと身につける必要があります。F1を使っている理由は、ラブラドール・リトリバーの仕事好きな性格と、ゴールデン・リトリバーのややおっとりした性格と、両方の良いところを出そうと考えて使っています。

11.その他

盲導犬がハーネスを着けているときは仕事中ですので、手招きや口笛などで気を引かない、食べ物を与えない、大きな声を出さないなどに注意していただきたいと思います。
ただし、盲導犬と歩いていても道に迷ったりすることはありますので、困っている様子のときや交差点で信号を待っているようなときには、盲導犬にではなく使用者に「どちらへ行かれるのですか。」や「何かお手伝いできることはありますか?」などと声をかけていただければ助かると思います。
盲導犬は身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)に基づき認定された犬であり、公共施設、公共交通機関、民間施設等を利用することが補助犬法により認められております。盲導犬使用者の積極的な社会参加にご理解をお願いします。
北海道盲導犬協会は、大きく募金活動、啓発活動、経理、総務といった業務を担当する事務部と盲導犬の訓練やユーザーの指導、子犬や老犬、繁殖犬に関する業務を担当する指導部に分かれています。職員の募集は不定期なため募集期日は決まっていませんが、募集することが決定した場合には協会ホームページや新聞求人欄、求人誌などでお知らせしております。

お電話でのお問い合わせはこちら
011-582-8222
受付時間 9:00〜17:00

メールでのお問い合わせはこちら